■ギャンブル依存症とは
日常的にギャンブルを行っていないと心理的、身体的に異常をきたす症状のことです。症状は「行動や物を欲しがる感情を抑えるられない」「願望を叶えられる状況に無理でなくてもなりふりかまわず行動する」「欲しいもの以外には関心を示さなくなる」「離脱症状_手が震える、汗が止まらない、眠れない、幻覚を見る」などでアルコール依存症とよく似ています。
離脱症状は薬物やアルコール依存症など体の中に原因物質が入ることで起こると思われがちですが、ギャンブル依存症でも発症します。それは、依存症が起きるしくみのためです。
人は快感を覚えると脳がドーパミンを分泌し興奮状態になります。興奮状態が長く続くと脳に悪影響をきたすため、これを抑えるためのコルチゾールが分泌されます。しかし、興奮状態を持続させる外側からの刺激が続くとコルチゾールの分泌が間に合いません。長く続くと興奮していることが普通の状態だと脳も体も思い込むようになり、それが途切れると禁断症状が起きるのです。
重度の依存症になると、周りの人間の言うことに耳を貸しません。ギャンブルが生活の全てになり仕事も失います。手持ちのお金がなくなれば借りられるだけの借りて、全てつぎ込んでしまうようになります。ギャンブル依存症を治すには、生涯ギャンブルとは関わらないという方法しかありません。
■IR法って何
IR法(特定観光施設区域の整備の推進に関する法律)とは、日本でカジノを開設することを認める法律のことです。2016年12月に公布・施行されました。「カジノ解禁法」「カジノ推進法」とも呼ばれています。
IR=Integrated Resort(統合されたリゾート)は、ホテル、シアター、ショッピングモール、スポーツ施設、コンベンションセンターなどの機能を併せ持った“娯楽&文化統合施設”のことです。家族で楽しめる総合リゾートと地域を元気にするための施設を一緒にをつくり、政府が管理監察して民間が運営します。その中にカジノを作るのを許可します、という法律です。大阪、沖縄、横浜、北海道そして東京などが建設候補地に挙がっています。建物を建てるときの工事、インフラ整備、完成後は観光、雇用、税収の増加といった地域経済促進効果が期待されています
■IR法案施行にともない検討されているギャンブル依存症対策
同時に懸念されているのがギャンブル依存症の拡大です。
「カジノができたからといってギャンブル依存症が増えるというのはナンセンスだ」という意見もあります。しかし、ギャンブルに接する機会が増えるのは間違いありません。IRによってカジノ依存症が広がるかどうかはわかりません。ただ、負のシナリオへの対策は講じておくべきです。そのためIR法ではカジノ規制、ギャンブル依存症対策を義務化しています。
ひとつめは「カジノ建設に際して建築面積に上限を設ける」という案です。面積に上限を設け規模が大きくなりすぎないようにします。収容人数が抑えられる効果がありますが、カジノへの出資を希望する海外の運営会社からは、利益率の悪い文化施設などの運営費を考えると面積を制限された施設では割に合わないため投資の減額に繋がる、という意見が出ています。
次は、日本人の入場規制と入場料の設定です。「カジノを利用する日本人は、連続する28日間に3日間しか利用できなくする(1日・24時間は出入り自由)。本人の確認はマイナンバーカードと顔認証を使う。同時に日本人からは2000円の入場料を徴収する」というものです。
3日ではなく10日にしないと経済効果が薄いという意見に対して24時間出入り自由では緩すぎるという意見があります。また、入場料についても不要論と2000円では海外のカジノに比べて安すぎるという声もあります。
対策を強めればギャンブル依存症や地域の安全に対しては有効かもしれませんが、制限をかけすぎれば肝心の経済効果が少なくなってしまう可能性もあり、そのあたりのさじ加減が難しいところです。
■まずは規制を、そして緩和を
カジノにはルーレットやカードゲーム、単純なスロットマシンなど数々のイベントがあり、カジノに対して免疫のない日本人には刺激が強すぎます。経済効果も目新しいうちは大きいでしょうが、あちこちに同じような施設ができれば、乱立するショッピングモールのように施設で観光客を呼べる役割を果たさなくなる可能性も大です。
ディズニーリゾートの成功は、テーマパークが日本人に認知され収益が上がる度合いに従って徐々に拡張していったことにあります。IRも焦らずまずは強めの規制をかけることから初めて、様子を見ながら段階的に緩和していくのが上策です。